ゆ 意味
- (1)五十音図ヤ行第三段の仮名。硬口蓋と前舌との間を狭めて発する半母音と後舌の狭母音とから成る音節。
(2)平仮名「ゆ」は「由」の草体。片仮名「ユ」は「由」の末二画の変形。
- 【弓】
ゆみ。他の語と複合して用いる。
「―がけ」「―はず」「―づか」「―づる」
- 【湯】
(1)水を煮えたたせて熱くしたもの。
「―ざまし」「鉄瓶の―がたぎっている」
(2)入浴するため,あたためた水。風呂。
「―加減」「―にはいる」「―から上がる」
(3)温+もっと...泉。いでゆ。
「箱根の―」「―の里」
(4)金属を溶かして液状にしたもの。
「なまりの―」
(5)煎(セン)じ薬。薬湯(ヤクトウ)。
「なほ試みに,暫し―を飲ませなどして助け試みむ/源氏(手習)」
(6)船の底にたまった水を忌んでいう語。淦(アカ)。
――の辞儀(ジギ)は水になる
湯にはいるとき,互いに遠慮して譲り合えば,せっかくの湯も水になってしまうように,遠慮するのも時と場合を考えなければいけない。
――を立・てる
風呂(フロ)を沸かす。風呂を立てる。
――を使・う
湯あみをする。入浴する。
――を引・く
湯あみをする。湯を使う。
「湯殿しつらひなどして,御―・かせたてまつる/平家 10」
――を沸かして水にする
せっかくの努力を無駄にする。
- 上代の自発・受け身・可能の助動詞。四段・ラ変の動詞の未然形に付く。
(1)ある動作が自然に,また無意識的に実現してしまう意,すなわち自発の意を表す。
「慰むる心はなしに雲隠り鳴き行く鳥の音(ネ)のみし泣か〈ゆ〉/万葉 898」「はろはろに思ほ〈ゆる〉かも白雲(シラクモ)の千重(チエ)に隔てる筑紫(ツクシ)の国は/万葉 866」
(2)他から何らかの動作・作用の影響を受ける意,すなわち受け身の意を表す。
「白珠(シラタマ)は人に知ら〈え〉ず知らずともよし知らずとも我し知れらば知らずともよし/万葉 1018」「沫雪(アワユキ)に降ら〈え〉て咲ける梅の花君がり遣らばよそへてむかも/万葉 1641」
(3)ある動作をすることができる意,すなわち可能の意を表す。実際には,打ち消しの語を伴って不可能の意を表す例のみが見られる。
「日な曇り碓氷(ウスイ)の坂を越えしだに妹が恋ひしく忘ら〈え〉ぬかも/万葉 4407」
〔(1)「らゆ」とともに,中古以降の「る」「らる」に対応する。もっとも,上代でも「る」の例は少しは見られる。(2)命令形の例は見られない。(3)中古以降は一般に用いられなくなるが,その残存形は,「いはゆる」「あらゆる」などの連体詞として,後世まで用いられる。また,「聞こゆ(「聞かゆ」の転)」,「思ほゆ(「思はゆ」の転)」,さらに「おぼゆ」などの動詞の語尾として残存するものもある〕
→らゆ
→る(助動)
- 〔上代語〕
(1)動作・作用の時間的・空間的起点を示す。から。
「はしきよし我家の方―雲居立ち来(ク)も/日本書紀(景行)」「天地の別れし時―いなむしろ川に向き立ち/万葉 1520」
(2)動作の行われる場所・経由地を示す。
「天離(アマザカ)る鄙(ヒナ)の長道(ナガチ)―恋ひ来れば明石の門(ト)より大和島見ゆ/万葉 255」「真野の浦の淀の継ぎ橋心―も思へや妹が夢(イメ)にし見ゆる/万葉 490」
(3)動作の手段を示す。で。
「赤駒を山野にはかし捕りかにて多摩の横山徒歩(カシ)―か遣らむ/万葉 4417」
(4)比較の基準を示す。より。
「人言はしましそ我妹綱手引く海―まさりて深くしそ思ふ/万葉 2438」
〔上代には,この語とほとんど同じ用法をもつ格助詞に「ゆり」もある。語源については,「ゆり」の補説(1)参照〕
→ゆり
→よ
→より(格助)
例文
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- あの歌のゆっくりしたリズムが好きです。
- 彼はゆうべ自宅で静かに息を引き取った。
- もっとゆっくり話していただけませんか。
- 彼はいわゆるありふれた親ばかではない。
- 引力は宇宙のあらゆる物に影響を与える。
関連用語
あお-ゆ: アヲ― [0] 【青柚】 ユズの実の,まだ熟さないで青いもの。 [季] 夏。《葉かげなる数へる程の―かな/虚子》
あさ-ゆ: [2] 【朝湯】 朝,風呂に入ること。朝風呂。
あし-ゆ: [0] 【足湯・脚湯】 きゃくとう
あた・ゆ: 【与ゆ】 (動ヤ下二) (「あたふ(与)」の転。中世後期から近世へかけての語。終止形は普通「あたゆる」) あたえる。「薬ヲ―・ユル/日葡」「恥辱を―・ゆる仕様あり/浮世草子・禁短気」
あつ・ゆ: 【篤ゆ】 ■一■ (動ヤ下二) 病気が重くなる。あつしる。「遘疾(ヤマイ)―・えて,大漸(トコツクニ)に至る/日本書紀(雄略訓)」 ■二■ (動ヤ上二) {■一■}に同じ。「大宮も頼もしげなくのみ―・い給へるに/源氏(澪標)」
あつ-ゆ: [0] 【熱湯】 熱めの風呂。「―好きの江戸っ子」
あま・ゆ: 【甘ゆ】 (動ヤ下二) あまえる
あめ-ゆ: [0] 【飴湯】 飴を湯で煮とかして,肉桂などを入れたもの。胃腸の薬とされ,夏の飲み物。 [季] 夏。
あら-ゆ: [0] 【新湯】 まだだれも入っていない風呂の湯。しんゆ。さらゆ。
あん-ゆ: [0] [1] 【暗喩】 隠喩
あ・ゆ: 【肖ゆ】 (動ヤ下二) 似る。あやかる。「鞆(ホムタ)を負(ハ)きたまへるに―・えたまへり/日本書紀(応神)」「その,たなばたの裁ち縫ふ方をのどめて,長き契りにぞ―・えまし/源氏(帚木)」
あ-ゆ: [1] 【阿諛】 (名)スル 相手の気に入るようなことを言ったりしたりすること。へつらい。「―追従(ツイシヨウ)」
い∘ゆ: 【射ゆ】 (連語) (動詞「射る」に受け身の助動詞「ゆ」の付いたもの) 射られる。「―∘ゆししを認(ツナ)ぐ川上の若草の/日本書紀(斉明)」
いで-ゆ: [0] 【出で湯】 温泉。「―の町」
いば・ゆ: 【嘶ゆ】 (動ヤ下二) いばえる